33週間が経ちました。

 


 ベルリンに来て33週間が経ちました。10月も後半に入り、ベルリンは天気が不安定で私も何だかもやもやすることの多い日々を過ごしています。留学をすると、同じように留学や海外にいる人々と出会って彼らがなぜここに来ているか聞く機会があるのですが、そのたびに凹むことが多い。他人と自分を比べることは何も意味がないと言っている人をよく見るし私もそうだろうなあ、とは思っているけど現実比べてしまう。そういう性格だもの仕方ない。そんで凹むし焦る。そういった感情をバネに成長できる人間ならまだいいのだけれど、そのタイプでもないので卑屈になるし劣等感を抱えて全てをシャットダウンしたくなる。

 そんな時に松田聖子の『天国のキッス』に出会って最近は何かと聞いている。もともと昭和の歌謡曲は大好きで聖子ちゃんも中森明菜も、河合奈保子Winkも、まあとにかく昭和のアイドルも愛してやまない。ハロプロよりも小松さんよりも先に好きだったのが彼女たちで、高校生の頃からカラオケでは木綿のハンカチーフとか赤いスイートピーを歌っていたくらい。

でも当時は有名なアイドル歌謡曲を満遍なく聞いていて、もちろん天国のキッスも有名で名曲なのだけどその時はまだ魅力や聖子ちゃんが持つ声の力に気付いてなくてただ漠然と聞いていた。

 それが最近、こんな鬱々とした毎日の中で出会った。まずイントロ、細野晴臣さんが作曲で彼がイントロからキーボードで奏でる映像を見たのだけど、あの天国にいるかのような地に足のついてない浮いたようなメロディ。そこからしてぐっと高揚感が生まれて、その後に聖子ちゃんが歌い出すのですがすでにメロディで天国にいるのであとは聖子ちゃんのキッスの部分。この曲は聖子ちゃんのブリブリ感がマックスで特にダーリンポーズと言われている曲中の振り付けは本当に脳がとろけて幸せな気持ちになる。人間幸せ度が高まるとお腹いっぱいになるもので私はこの曲を聴くと満腹になる。

 

 歌詞や曲の解説は出来ないのでそっちのことを言いたいんじゃなくて、私は聖子ちゃんが本当に歌が好きであのニコニコ笑顔で歌う姿が本当に好きだ。聖子ちゃんの時代のアイドルはあまりダンスが重視されてなかったように思うし、それは正解だったと思う。みんな歌が歌いたくて、歌でちやほやされたくて出てきているしそこのハードルが高くて歌が上手くないと出てこられない世界だったと思う。歌が歌いたくて、それだけでもう十分アイドルになる理由になっているしアイドルはそれだけでいいと思う。逆に歌だけでこちらをこんなに幸せな気持ちにしてくれる子が一人でも出てきてくれたらそれはもう何よりアイドルファン冥利に尽きるものである。

 今のアイドルは、と比べられる存在ではないのだけれどどうしても比べてしまう。土壌も時代も、今のアイドルファンが求めるものも昔と今とでは違っているのだから、その需要を満たすアイドルが変化するのも当然のことだというのは十分にわかっているつもり。人間の好みの多様化だけでは割り切れないものがそこにあるのではないか、私はそこにあえて一歩踏み込むことは出来ないけれど。

アイドルは歌が歌いたくて、なる。それ以外に私は何もいらない。ダンスが好きで、踊りも歌も両方好きでとかはたまた女優になる通過点として、人生の経験のために、誰々に憧れてとか、そういったことは私の中では全て邪道になってしまった。天国のキッスを聞いてから。

もしかしたら聖子ちゃんも歌を歌いたいだけで入ってきたのではないかもしれない、けれど、あの振り付けもダンスもほぼ皆無で歌声と目配せでこちらの心をぐっと掴んで離さない、その事実がある。

 ダンスが好きならダンサーになってほしいし踊りと歌が好きならどちらかに絞るか両方極めてから求められる場所に行ってほしい。みんなそれぞれ能力が求められる場所に収まってほしい、アイドルが飽和してる今、たくさんの子がアイドルになって実りなくやめていく。勝手に応援しておいて言うな、と言われそうだけど応援している側の身にもなってほしい。先日ハロー!のカントリー解体のニュースを観て強くこういったことを考えるようになった。梁川奈々美ちゃんが卒業発表した辺りかその前くらいからアイドルを好きでいることに疲労を感じ始めていたけど、今回の解体でアイドルにたいしての感情が老けてしまった。

 今のアイドルに求められるものとアイドルが求めているもの、それが私が描くアイドル像とかけ離れてきていて、ハロー!が崩れ出したことをきっかけにその差を見ないふりが出来なくなったのだろう。

 今は歌うことが好きで歌いたい子はアイドルにならないし、歌手としてデビューしてもすぐに消えてしまう。聖子ちゃん時代の神がかったプロデューサーや作曲家、作詞家がいない。本当に奇跡だったのだ、あの時代に作詞作曲家陣に加えて歌姫が歌声を添えるなんて、今後昭和のアイドルのようなアイドルが出てくるわけがない。

 

 イタリアから帰ってる途中に書いたのですが、疲弊からイライラに繋がってしまって荒くなってしまった〜〜。